アナフィラキシー

アナフィラキシーとは、アレルギーの原因(アレルゲン)が体内に侵入してから短時間(数分~2時間以内)で、体の複数の臓器に症状があらわれる重篤なアレルギー反応です。生命が危険になることもあり、早期の対応が非常に重要です。

主な原因

アナフィラキシーを引き起こす原因はさまざまです。

代表的なものは以下の通りです。

分類 主な原因物質・例 補足事項
食物 卵、牛乳、小麦、そば、ピーナッツ、木の実類、甲殻類(エビ・カニなど)、魚類 など 小児では食物が最多の原因。 鶏卵、乳製品、小麦、木のみ類が多い
昆虫 (蜂毒) スズメバチ、アシナガバチ、ミツバチ 刺傷後10〜20分で急速に進行することがある。再刺傷でリスク増大
薬剤 抗菌薬(ペニシリン系・セフェム系など)、解熱鎮痛薬(NSAIDs)、造影剤、抗がん剤など 高齢者での報告が多く、点滴投与などで短時間に重症化しやすい
ラテックス (天然ゴム) 医療用手袋、カテーテル、風船など 医療現場での曝露や職業性アレルギー
運動関連 食物依存性運動誘発アナフィラキシー(例:小麦摂取後の運動) 単独では症状が出なくても、食物+運動が組み合わさると発症します
ワクチン・生物由来製品 一部のワクチン(ゼラチン、安定化剤など) 極めてまれ
その他 原因不明(特定不能)

既往にアレルギー疾患(喘息、アトピー性皮膚炎など)がある人や、過去にアナフィラキシーを起こしている人はリスクが高いことが知られています。

とくに、コントロールがされていない気管支喘息はアナフィラキシーの重篤化因子となり、喘息治療も重要です。

佐藤さくら 他. アレルギー2022;71:120-9

アナフィラキシーの症状

アナフィラキシーは多臓器に症状が出ることが特徴です。

一部の主な症状には以下があります:

  • 皮膚:粘膜:じんましん、かゆみ、赤み、唇・口まわりの腫れなど 
  • 呼吸器(肺・気管・気管支):息苦しさ、呼吸音の異常(ゼーゼーなど)、咳、のどの腫れなど 
  • 循環器(心臓・血管):めまい、血圧降下、ショック状態、意識の混濁など 
  • 消化器(胃・小腸・大腸など):腹痛、吐き気、嘔吐など

複数の臓器(例えば、皮膚+呼吸器、または皮膚+循環器など)の症状が同時に出るケースがアナフィラキシーと判断されます。

アナフィラキシーへの対応

緊急対応のポイント

アナフィラキシーが疑われたら、次の行動が非常に大切です:

  1. エピペン®(アドレナリン自己注射薬)の使用
    症状がある場合には迷わず注射することが推奨されています。
  2. 救急車を呼ぶ・医療機関を受診する
    エピペンを使用した後も、症状の再燃(二相性アナフィラキシー)の可能性があるため、必ず医療機関での評価が必要です。
  3. 観察時間を確保する
    症状が改善しても、1~6時間程度の観察を行うことが指導されています。特に重症例では長めの観察が望ましいです。

アナフィラキシー予防と管理

アナフィラキシーを予防し、安全に生活を送るための重要な対策があります。

  • 過去に症状を起こした原因アレルゲンを特定し、それを避ける指導を受けること。
  • エピペンの携帯と使い方のトレーニング。使用方法を家族・職場などでも知っておく。
  • 医療機関でのフォローアップ、原因の検査(食物・蜂毒・薬など)と記録。
  • 学校・職場で緊急対応体制が整備されているか確認すること。薬の保管場所・連絡手段など。

浦賀メディカルクリニックはエピペン®が処方可能な医療機関となります。とくに、ハチ刺傷に関わるアナフィラキシー患者では、エピペン使用率が低いことがわかっており、林業、造園や農業や電気工事等の屋外作業の多い職種の方は注意が必要です。

院長からのひとこと

アナフィラキシーは生命に関わることのあるアレルギー反応です。

当院では原因アレルゲンの特定や、エピペン®の処方から使い方や、緊急時の対応や予防や管理について本人やご家族への指導を行いつつ、アナフィラキシーの予防と管理にも重点を置いています。過去にアナフィラキシーを起こしたけど、エピペン®を持ったほうかいいか分からないなど、心配があればお気軽にご相談ください。